154杯目:富士そばアルバイトの時給、正社員の月給 |
たとえば、グルメ記事の案件だとすると「取材1軒につき○○円」などと依頼される(1ページ○○円、1000文字○○円なども)。○○のなかに入る金額はピンキリで、制作予算や執筆の分量によって変動。ウン千円からウン万円まで、広告などが絡むと文字通り桁違いになることもある。
原稿を納品して、ギャラが振り込まれると、おおざっぱに時給換算してみる。取材先への往復移動時間、取材先の下調べ、取材、執筆などもろもろに掛かった時間でギャラを割り算する。クライアントとの打ち合わせや、取材先へのアポイント、取材先への原稿の校正依頼などが加わると時給はどんどんへっていく。最終的に、とてつもなく低い金額になってしまうこともある。「ガキのつかいやあらへんで!!」。座布団に深く顔をうずめて叫びたくなることもある(うちのアパートは壁が薄いのだ)。
時給1375円を切ることもまれにあった。唐突に出てきた1375円とは一体なんの数字か。じつは、富士そばアルバイト店員の時給なのだ。深夜手当てを含んでこの金額。勤続年数によって6月・12月にボーナスもでる。金額はわからないが正月の餅代くらいにはなるだろう。利用者の実態はわからないが有給休暇制度も設けているそうだ。
従来のファストフード店は1000円くらいが相場だろうか。額面どおりに受け取るなら、富士そばは厚待遇といっていい。この事実に、貰いすぎでは?と思う人もいるだろう。覇気のない枯れ木のような年配スタッフを見るととくにそう思うのでは? たしかに、よそで働く時給千円の高校生のほうがよっぽどハキハキしている。しかしここで、富士そばにハキハキは必要かという疑問も浮上。富士そば独特のゆるさ、イナタさ、いやしさ、ときにやるせなさ。あれは、10、20代そこらの小僧にはマネできない。人生を折り返したセンパイの真骨頂っス。いわば技術料っス。
それでは、正社員はいくらもらっているのか。勝手で申し訳ないけれど、できれば薄給であってほしい。毎日、憂鬱な寝覚めを迎えていてほしい。だって、富士そばに幸せ者は似合わないから。きっと、幸せな者には富士そばの本当の味は出せないから。
収入を知るヒントが「経堂店」にあった。店頭に正社員募集のPOPが貼ってあったのだ。POPには「主任」に始まり「本社係長」までの給与が記されていた。
・店持ち主任:月給29万円
・店長候補:月給32万円
・店長心得:月給35万円
・店長:月給37万円
・本社係長:月給41万円
「店長心得」という謎のポジションは置いておいて、なかなか夢のある数字だと思いませんか? まあ、週6勤務のフル稼働だろうけど。
この金額を知ってしまうと、素直に富士そばを楽しめなくなっちゃうよ。世間への不平・不満がつゆの隠し味であってほしい、と思う者にとってはね。ゆたかさのアンチテーゼなんだ、富士そばは。
POPには大きく「富士そばにのぼってみよう。」だって。浮かれちゃって。客(俺)もいっしょに連れてけ、このやろー!
希少性:― インパクト:★★★ コスパ:―