210杯目:富士そば五反田店で鶏ごぼうつけそば |
とはいえ、店員、客が顔なじみの店ですら言葉を交わすことはなく当てのない視線は自然、テレビの相撲中継に固定され、ただただジョッキを干すことだけに集中する。気をきかせた常連客が話しかけたころには、かなり酔いがまわり呂律も怪しい。だから、なんの気おくれもなく仲良くしている彼らに、羨望と嫉妬がないまぜになったアンビバレントな感情を抱いてしまうのだ。
なじみの酒場ですらこの有様だから、「人のふれあい」を真っ先に排斥しているであろうファストフード店にて、店員と長話をするご高齢の御仁を見かけると仙人にでも出くわしたような思い。私には到底行き着けない境地だ。
その点、富士そばは気が楽だ。発する言葉は、食券を渡すときの「そば(うどん)で」。料理を受け取るときの「どうも」。食器を返すときの「ごちそうさま」だけ。わずか3つの言辞で事足りる。
しかし、それでは飽き足りない仙人が富士そばにもいるようだ。五反田で打ち合わせがあったその日、私は「五反田店」で秋のタペストリメニュー「鶏ごぼうつけそば」(480円)を食べていた。
希少性:★☆☆ インパクト:★★☆ コスパ:★★☆