料理には「和風アレンジ」というバリエーションがある。たとえば、和風パスタとか。明太子と刻みのりを添えたり、あさりとバター醤油をからめたり。あと、和風ハンバーグね。これはたいてい、大場とおろしポン酢がトッピングされている。出汁や食材、様式に何かしら和食の要素が加われば和風アレンジになってしまう。和風アレンジの関所は思いのほか、ゆるいのだ。
ただ、富士そば「井の頭通り店」の「桜えび和風カツ丼」(そばセット:750円、単品:500円)はね。関所を抜けられるかどうか、ですよ。「和風」と冠しているけど、そもそもカツ丼とは和食という立ち位置ではないのか。とんかつの起源をカツレツとするなら、カツ丼とは和風アレンジなわけで、富士そばの主張を受け入れるなら和風マシマシ状態ということになる。
POPの一文がさらに混乱させた。「サクサク カツにあんとマヨがからみ」とある。マヨネーズは和風じゃない。小料理屋でマヨネーズを使った小鉢が出てきたら、怒るでしょ。
情報過多でわけわかんねぇ! ということで実際に頼んでみたら、あら、びっくり。なかなか美味そうなビジュアルじゃないのよ。
たまねぎとニンジンのあんかけもイイ感じにテロテロ。さて、肝心の和風要素はというと、おそらく「和風」はこのあんかけにかかってるんだろうね。つまり、「和風あんかけ」ということ。果たして、実際に食べてみたところ、ほらやっぱり和風あんかけだあ。口に入れる瞬間まで「甘酢あんかけだったらどうしよう」と思っていたんだ、じつは。マヨネーズもそんなに邪魔になっていない。というか、存在感がないので、おまえはいなくていいよ。
ボリュームはあるけど、カツ丼よりは軽め。そば以上カツ丼未満を希望する人にはいいかもしれない。
希少性:★★☆ インパクト:★★★ コスパ:★★☆